- 加藤 淑美
令和3年度 鍼灸マッサージ学科卒業
鍼灸院 助産院 楪(ゆずりは) 開業
私の学生時代はコロナ渦真っただ中で、学校行事は中止になりクラスメイトと行事を通しての思い出はそれほどありませんが、個性豊かなクラスメイトと毎日勉強や実習を共にした日常の日々が素敵な思い出です。全国には様々な鍼灸学校がありますが、四国医療専門学校では色々な流派に応じた様々な治療方法を学ぶことができました。生涯勉強が必要な鍼灸師にとって、色々な分野の先生が様々な治療方法を教えてくださることは、今後自分がさらに学びたいものを明確にするための第一歩になったと感じます。逆を言えば、学びたい内容を自ら掴みにいかないともったいない3年間になると思います。放課後には多くの先生が課外ゼミを開催してくださり、学びはさらに深まりました。
私は卒業後すぐに開業しましたが、まだ予約件数も少ないため、助産師として分娩施設や産後ケア事業を行う助産院で働いていることもあり、多くの妊産婦や母親たちとの関りがあります。
妊娠中は「妊娠しているから仕方がない」と放置されるトラブルも多く、鍼灸の出番は意外にあります。よく鍼灸治療が行われる逆子や悪阻(つわり)に対してはもちろん、姿勢の変化や体重増加による腰痛や肩こり、足のつり、手足の浮腫など様々な症状にも対応できます。そして予定日近くになると、お灸は陣痛誘発に驚くほど効果があります。産後では積極的な鍼灸治療は行わず、あん摩やオイルマッサージを行い疲労した体に優しく施術し回復を促します。子育て中のお母さんに対しては、それぞれの悩みに応じた鍼灸施術を行います。最近は育児用品や制度が充実している反面、情報過多で育児に自信を持てない母親や、産後うつ傾向の母親もよく見かけます。このようなメンタルに問題を抱える産後や子育て中の母親にとっても鍼灸治療が効果的であるということは、私が鍼灸師を目指すきっかけでもありました。
現在は、助産院だけでなく行政や子育て支援センター、店舗などでセミナーをさせていただき、鍼灸治療をしています。助産師として西洋医学の立場に加え、鍼灸師として東洋医学の視点から対象者を見ることができ、アドバイスの幅が広がりました。そして今まで鍼灸と全く無縁だった多くの方に、自分の身体に目を向けて身体の変化を知るきっかけを伝えるツールとして鍼や灸をお伝えすることができ、その効果を実感してもらえた時は本当にやりがいと幸せを感じます。
県内外の鍼灸師の先生方のご紹介や交流の機会を設けてくださったり、マッサージの特訓や楽しい食事会など、卒業後も四国医療専門学校の先生方と交流ができる事を嬉しく思います。また昨年は鍼灸マッサージ学科・鍼灸学科1年生を対象に「生命をつなぐ」をテーマに講演をさせていただきました。このようなステップアップの機会は、今後の励みとなります。
いま日本は危機的少子化問題に直面しています。微力ながら今の私ができる事、それは命を育む女性に『幸せな時期だった』と言ってもらえるようケアや施術を提供することだと思っています。本来なら幸せや喜びを感じる時期、女性たちの痛みや苦痛や不安などを少しでも取り除くことにより、子どもを産み育てることへの抵抗を減らし良いイメージを持ってもらいたいと考えています。まだまだ未熟で駆け出し鍼灸師ですが、唯一無二のプロフェッショナルを目指して頑張ります!
2023年3月