授業訪問「リラクゼーション方法論」
看護学科3年生では「リラクゼーション方法論」の授業(30時間)があります。
学生にとっては、はじめての「タクティールケア」です。
講師は、鍼灸マッサージ学科の大麻陽子副学校長です。
最終日は看護学科の先生方にも試験官としてご協力いただき、背部タクティールケアの実技試験が行われました。(あぁ~手に汗、緊張したよ~)
Relaxation(リラクゼーション)とは、くつろぎ、緊張・筋肉・精神の緩みと訳され、身体と精神の緊張状態、不安な状態を緩和する意味合いをもちます。リラクゼーション法とは、緊張の緩和を促すために、筋肉の緊張を和らげると同時に、呼吸を整え、心身を安らいだ状態にするための技法を指します。看護においては癒しのケアの技法として、また身体を安楽にするケアの中に位置づけられています。
この授業では、看護師におけるリラクゼーションの位置づけ、目的、環境、実践する意義について学んだ後、「タクティールケア」の基礎知識、効果、そして実技を行っています。タクティールケアは「触れる」という意味のラテン語Tactilis(タクティリス)に由来し、1960年代、未熟児ケアを担当していた看護師によって始められたスウェーデン発祥のタッチケアです。タクティールケアに関する研究は1990年代後半より盛んになり、日本では2006年に紹介されてから広まっています。認知症、がんの緩和ケア、未熟児医療、障害児医療、ストレスケアなど活用の範囲は多岐にわたり、症状の緩和だけでなく、生活の質の効果も報告されています。
タクティールケアは、ツボを押したり、筋肉を刺激するようなマッサージとは異なり、手で柔らかく包み込むように背部や手部、足部をゆっくりなでるケアです。触れるケアは、オキシトシン(幸せホルモン)の分泌を促す作用があり、ストレスを緩和し、不安の軽減や他者との相互作用の促進に影響するとされています。
また、行われる側だけでなく、行う側もオキシトシンが分泌され、触れている人も心地よさを感じることができます。(癒し・癒されるケア)
最初は、「ゆっくりなでるだけで効果があるのかな?」、「やってみると思ったより難しい」、「人によって圧やスピードが違う」、「手が浮いた感じでくすぐったい」、「背中より手や足の方が難しい」との感想もありましたが、回を重ねるごとに少しずつ上手になり、「友達に気持ちよかったよ、と言われてうれしかった」、「なでるだけでも痛みが軽くなってケアの良さが分かった」、「クラス全体で手技が揃ってきたと思う」「手だけでなく、体の使い方も大事と分かった」、「母指の当たる面積が広いと母指軽擦が気持ちいい」、「実習で患者さんにできるケアに出会えてよかった!」、「家族に背中のタクティールケアをしたら毎日してほしいと喜ばれた」、と毎回、授業の感想を具体的に書いてくれた3年生です。
タクティールケアはすぐに実践できて、患者、利用者の喜ぶ顔を見ることができる、ナースにとって、まさに「看護の原点」を振り返ることのできるケアです。この授業をきっかけに実習等でも実践し、手で“触れて”痛み・苦しみを緩和する「タクティールケア」の魅力を知ってほしいと思います。
あたたかい手、あたたかい心で。