母乳育児支援と母乳マッサージ
今年も鍼灸マッサージ学科3年生を対象に「母乳育児支援と母乳マッサージ」の授業が行われました。講師は看護学科主任で総合周産期母子医療センターでの勤務経験を持つ助産師の松田美穂先生です。
特殊マッサージである「乳房マッサージ」は、実技の教科書にも手順や留意点が紹介されていますが、それだけでは不十分・・・。国家資格のあん摩マッサージ指圧師が「乳房マッサージ」を実施するにあたっては、母乳に関する専門的知識を持ち、母乳育児支援のさまざまについても良く理解したうえで施術ができるようになることが大事です。
授業の前半では「なぜ母乳が良いのか?」を①栄養素 ②愛着形成 ③発達の促進 ④母体へのメリットなどから詳しく教えていただきました。
また、「母乳育児支援」では授乳にあたって大切な「ポジショニング」(母子がリラックスできる適切な姿勢)と「ラッチオン」(赤ちゃんが効果的におっぱいを含んでいること)を写真でポイントをわかりやすく説明いただきました。ポジショニングのポイントは無理な姿勢でないこと、お母さんと赤ちゃんの体が密着していること、赤ちゃんの頭と体がまっすぐであること、お母さんが前かがみでないこと、赤ちゃんがおっぱいの高さに引き寄せられているなど・・・たくさんありました。しかし、無理な姿勢や抱き方が悪いために起こる腰痛や背中の痛み、頸、肩こりもあるので授乳の際の適切な姿勢はとても大事なことがわかりました。
「トラブルとケア」では、おっぱいの緊満とはどのような状態か、また、それが続くとどうなるか、産後の時期に合わせたアドバイスとケアについて乳房モデルを使って松田先生の実技デモンストレーションがありました。基底部のマッサージ、乳管開通法など、指の当て方や押す方向まで具体的に教えていただきました。乳房マッサージを施すにあたり、ここは大事なポイントで経験が要るところです。
「乳腺炎ケア」では、おもな原因と予防、診断の目安と症状、非感染性乳腺炎のケアについても最新のフローチャートを見ながら丁寧に説明していただきました。「所見や症状からは感染性乳腺炎と非感染性乳腺炎の鑑別はできない」ということで、感染性乳腺炎を疑うケース6つ(①最初から症状が激しい②乳頭損傷がある③十分搾乳して半日~1日たっても軽快しない④繰り返す⑤母親の全身症状が悪化している⑥24時間以上続く発熱)はとても参考になります。乳腺炎は授乳中の女性がよく遭遇する疾患ですが、予防が可能なので、あん摩マッサージ指圧師にもアドバイスできることがあると思います。
「母乳に関わるホルモン」、プロラクチンとオキシトシンの分泌は試験でもよく出るところですが、今回は母乳育児支援の角度からあらためて勉強したのでしっかりと頭に入りました。
「母乳分泌を促すケア」
・母乳は血液から作られているので全身の循環を促すと分泌も良くなる
・体を温める
・特に背中の上部をマッサージする
・特に背骨の両脇をマッサージすると効果的
・しっかりと肩を回してほぐす
・ストレッチの動きを取り入れるのも良い
松田先生のご経験からも、射乳反射を促すケアとして背部のマッサージが有効で、肩甲間部をしっかりマッサージして、肩をよく回してほぐす動きを取り入れると良いとのことです。産後のケアとして、身体的、精神的不調をマッサージでやさしく上手に緩和できるよう、技術も高めていきたいと思います。
ありがとうございました。