「そもそもツボってなぁ~に? ツボの基本知識と頭痛に効くツボ」
今年度、最初の「癒しのツボ」ということで、「あらためてツボの基本について教えてほしいです~」と番組ディレクターさん。グッドタイミングですので、リクエストにお応えしたいと思います。
人体にあるツボ、皆さんはどんなイメージをお持ちですか?「凝っていると感じたときに押すと気持ちいいところ」「ツボがあるのは知ってるけど、どこにあるの?」「押すと痛かったり気持ち良かったりするところ。でもどんな効果がある?」などなど、ツボの正確な位置や効果について、実はよくわからない・・・という人も少なくないのではないでしょうか?
今回は「ツボって何なのか?」というツボの基本知識から「頭痛に効くツボ」をご紹介します。
そもそもツボとは? ツボの由来や原理
実は、ツボというのは実体がないのです。といっても、もちろん、存在しないわけではありません。皆さんも痛いところをさすったり、押したりして、楽になった経験がありませんか? 昔の人たちも本能的にそうするうちに、ある場所を刺激すると痛みが治まるなど、さまざまな効果があることに気づいたのです。経験の蓄積によって、効果のある位置や扱い方が確立されたものが「ツボ」なのです。その効果は、すでにグローバルに認められていて、現在、361のツボがWHO(世界保健機関)によって定められています。
10年位前の話ですが、当時のNHKスペシャルで「完全解凍!アイスマン~5000年前の男は語る~」が放映されたのです。1991年にアルプスの氷河から発見された約5000年前のミイラの男性、「アイスマン」の身体にツボの痕跡がありました。当時も治療部位として利用されていたのでは?と推測されたのです。アイスマンに残されたタトゥーの位置と、いくつかのツボの位置が一致していることから、考えられているよりも、もっと古い時代からツボによる治療が行われていて、その起源が中国ではない可能性があることも注目されました。もともとは、石器時代に植物や尖った石などが偶然身体にあたった時に痛みが消えることがあり、そこから石で身体を刺激して治療効果を得ようと発展したと考えられているのです。古代中国に限らず世界中、ありとあらゆるところで人類の経験則として引き継がれてきた、ということかもしれません。
東洋医学の思想から生まれたツボ
ツボは東洋医学の「気」の概念に基づくものです。東洋医学で気とは生命エネルギーそのもの。目に見えませんが、体を構成し、生命活動を維持する重要な働きがあります。健康とは、気が正常に生み出され、体内を規則正しく巡っている状態のことで、気が不足したり滞ったり、逆行したりすると、バランスが崩れて病気になるのです。「病は気から」とは、このことです。
気は、体内に張り巡らされている「経絡(けいらく)」を通って、臓腑や筋肉、皮膚に働きかけます。経絡には気の出入り口である「経穴(けいけつ)」があり、これがいわゆるツボです。ツボは経絡に沿って、全身に点在しています。ツボを刺激することで経絡を流れる気を調整でき、気の流れがスムーズになると、経絡とつながる臓腑が活性化されて、体調が整うというわけです。このようにツボや経絡を利用した治療法として、鍼や灸、あん摩、指圧などがあります。
痛みに効くツボ
基本的には、頭痛に効くツボは頭、腰痛に効くツボは腰というように、痛みがあるところに、その痛みに応じたツボがあります。また、肩が凝って痛いときに、肩を押したり揉んだりすると楽になるように、触れると症状が改善するところも、たいていはツボです。実際、肩には「肩井(けんせい)」や「肩髃(けんぐう)」など、肩こりに効くツボがたくさんあります。また、ツボは患部から離れたところにもあります。たとえば片頭痛のとき、足の甲にある「足臨泣(あしりんきゅう)」というツボを押すと楽になるのです。おもしろいでしょう?これは、足臨泣と側頭部が「足少陽胆経(あししょうようたんけい)」という経絡でつながっているからなのです。中には即効性があり、痛いときはまず、ここを押せばいいというレスキュー的なツボもあります。例えば、腰痛は慢性的な腰痛からギックリ腰まで「腰腿点(ようたいてん)」というツボがとてもよく効きます。また、肩がこって肩や腕が痛いときは「曲池(きょくち)」と「手三里(てさんり)」が有効です。手や腕にあるツボなので押しやすく、腰や肩をもみほぐすのと同じ効果があります。ツボはたくさんありますが、その中から代表的なツボをいくつか覚えておくだけでも、普段の健康管理に役立ちます。
自宅でできるツボ押し
ツボの大きさは米粒大くらいのイメージです。見つけるにはまず、大体の見当をつけて、そのあたりを押してみましょう。ツボに当たると、痛気持ちいいと感じます。ツボを押すときは、指の腹で垂直に押します。強さは気持ちいいと感じるくらい。軽くて十分です。3~7秒くらいかけてゆっくり押し、ゆっくり戻しましょう。回数は1日4~5回が目安。押した直後に痛くなったり、押したところがあざになったりしたら、やり過ぎです。「このくらいがちょうどいい」と自分で見極めることも大切です。
頭痛に効く足のツボ 太衝(たいしょう)・足臨泣(あしりんきゅう)
太衝 特に前頭部や額が痛いときに。位置は、足の親指と人差し指の骨の間を甲に向かって探っていき、親指と人差し指の骨が交わる少し手前に取ります。触れると脈を感じます。
足臨泣 頭痛や側頭部が痛いときに。足の甲の薬指と小指の間から、足首の方へ約3㎝たどったところにあるくぼみ。薬指と小指の骨が交わる手前に取ります。